年末商戦4日目 ―― 手作りウスターソースでハンバーガー

前もってリストアップしてある年末メニューの候補の中から今回はハンバーガーをチョイス。
出し物を日替わりにしているのは、単に私が飽きっぽい性格のためにいろいろなものを作った方が楽しくやれるというのと、子供にもどんな料理が出るのかとワクワク感を持ってもらいたいからだ。
 
日本ではどうか知らないが、ここフィリピンでは、いろいろなおかずが並んでいる作り置きの食堂(トゥロトゥロ)を別にすれば、日替わりで料理を提供している屋台というのは見たことがない。
確かに、一品に絞っておけば、工程も決まっているので作業はラクになるし、何より買い入れておく食材や調味料も同一なので鮮度管理(食材廃棄)の問題は発生しにくい。私はこの逆をいっているわけだが、前者の点は、毎回ノートに原材料のリスト(=後の買い物リスト)と次回の改善点を記しておくことでほぼクリアされ、後者の問題も
・まめに市場に行って生鮮品の備蓄はしない
・手作りウスターソース、手作りピクルス、そして十数種類のスパイス・ハーブといった長期保存できるものを揃えておく
・安値の時にまとめ買いした野菜を使い切れるよう多くのレシピを身につけておく
といったことで負担をかなりの程度、無いものにしている。
 
さて今回のハンバーガーだが、こちらの「要」といったら何といっても甘酸っぱい手作りウスターソースである。
フィリピン人の味付けといえば、醤油・砂糖・酢・にんにく・玉ねぎ・でチキンなどを煮る「アドボ」(How to cook adobo)アミエビの発酵調味料である「バゴオン」柑橘を使った「toyomansi」などたいしたバリエーションは無く、ウスターソースお好み焼きソースは未知の味である(厳密には、隣の市のショッピングモールにウスターソースは売ってあるのだが、これ幸いか 私の町の市場で見かけることは無い)。この味を知ってもらえばリピーターとなって後々の販売がずっと楽になる。
そうしたこともあって、今回はウータン(借金)を緩めに許可して大売り出しとした。味の方は確かなようで、食べたほぼ100%の子がもう1個ウータン、とせがんでくる(が、残念、ウータンで食べられるのは一回だけだ)。
こうして固定客の子を掴んでおけば、その子が成人して子供ができても私の料理を買い与えてくれるだろう。こうした目論見のうえにウータンが許可されていることに思い至る子は一人もいない。この日本人が作るものならまず間違いはないだろうと、半ばブランドが確立されつつあり、メニューを訊くのもそこそこに会うなりビリ・アコ(私、買います)、とコインを出してくる子すら…。

このようにして、不法滞在日本人による食の文化侵略は静かに進行しつつある。(編集部注;SRRVはAEPを取得しないと働いてはいけません。(いつだったかチャイナタウンの夜の屋台の様子をみたいなと思ってトンド・屋台とかでググってみると動画が出てきて、近くの初老の日本人がやっている食堂がヒットしたがこれは婚姻ビザだから問題ないとして、もう一つの青年の方は3ヶ月に一度 出国しないといけないので、と答えており、これはガッツリ観光ビザであって、逆立ちしても商売してはダメなビザ。看板や幟も出していたけどいいのだろうか?)

私が作るこのハンバーガー、みなさんの知るビーフ100%で作っていると利益が出ないどころか大赤字になってしまう(もしくは子どもたちの手の出ない価格になってしまう)ので、さまざまな営業努力でこれを克服している。(ちなみに牛肉は₱400/㌔前後、豚肉は₱300(半年前まで₱240だったのに急に値上がりした)チキンは₱160(骨も付いているので感覚としては₱200くらいか)。エビやイカは₱300台、フィリピンの国魚バングス(ミルクフィッシュ、日本でカレーにも使われる、私もやってみたい)は₱150〜200、大衆魚ティラピアは大きさによって₱20〜100だ(安いなぁ、今度フィレオフィッシュに挑戦するかぁ)

まず、牛肉ではなく豚肉を使う。少しだけのそれを、玉ねぎと私の畑で取れたストリングビーン・茄子・芋蔓と合わせて炒め、卵(@₱7を2個使用)でとじる。ハンバーグのメソッドから着想を得て、卵液には嵩増しとして押麦・パン粉が混ぜられている。
これらは大きなひとつのフライパンで作られ、その丸く薄い卵とじを3✕3に格子状に切り分ける。できた9つの他に、その外側、円のフチに当たる部分が4つできるので最大13枚のパティが取れる。
バンズの方は6個入のもので、村や沿道のサリサリストアで₱25で売られているが、もちろん市場の方が安価で、₱20で買ってくる。この1個を水平方向に4つにスライスすれば2つのハンバーガーを作れるので一袋では12個となる。
これを1個16ペソ、その半分にしたものを8ペソで売っている。Wバーガー仕様も可能でそちらは30ペソとしているがまだ注文がかかったことは無い。こうした価格は、路傍のフランチャイズ店はBAY1TAKE1といって2個売りが基本で、ハンバーガーが32ペソ、チーズバーガーが40ペソといった価格帯なので、それと似たようなものだ。むしろ私のバーガーの方が手作りパティである分、お値打ちかもしれない。

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おいしいハンバーガーにレタスは必須だと思っていたのだが、顔見知りになった野菜商から、見切り品をタダ同然で仕入れていたのをその人が廃業となったため、採算ラインで入手することができなくなってしまった(というか、レタスが手に入った時だけハンバーガーを作っていた)。他にハンバーガーに入っている野菜といえば、先にも挙がったキューリ(フィリピン名:ピピーノ)のピクルスであり、これを手作りして使うことにした。砂糖を多めに入れるとおいしいようだ。そしてここでも驚きの南国フルーツ味で、スパイス・ハーブも5種類以上入っている。

パティとピクルスを乗せ、最後にウスターソースバナナケチャップ(前回の稿参照)、マヨマジック、マスタードソースの4つのソースをかけて完成だ。他のハンバーガー店や最大手のジョリビーバーガーなどは、甘ったるいソースがかかっているだけでとても食べられたものではない(「ジョリビー」ググると「ジョリビー まずい」が候補に出てくるので察してほしい)。

私も夕食を食べないといけないが、パティを3つほど残して販売を打ち切り、近所のウータンのあるお宅から その相殺として日清カップヌードル(大)の容器にご飯を12ペソで盛ってもらう。これは一般の食堂の1.5倍ほどの盛り率であり、私が損を被ることはない。
一方、余ったバンズの方は当日か翌日に「チョコバナナパン」として売る。スライスしたバンズに薄切りのバナナを乗せてチョコソースをかけたもので、日本のチョコレートパフェをイメージして、(私が食べたいから)開発されたものだ。これも子供に人気が高く、手間を掛けずよい利益が約束されているメニュー(だが、乱発はしないようにしている)。チョコソースは糖度が高いためか冷蔵庫に入れなくても日持ちするし(冷凍食品はどこの市場でも 日長一日常温で陳列されているので、これくらいは日本にいる諸氏の心配には及ばない)、バナナの方は私のおやつとして携行している分なのでその消費具合はどうとでもできる。さらにそのトッピングのどちらかが切れたときはロフト部にハチミツ瓶を常備してあり、それを少量かけてハチミツパンとして売る(ハチミツは市場なんかに売ってあるのに食べたことがない子がほとんどだった)。このようにして、小さな工夫を重ね、安価且つ持続可能なハンバーガーが実現されているのである。

 

能書きがたいへん長くなってしまったが、今回は初めてバンズを2袋買って販売することにした。ご飯ものに近いくらいの利益を上げるには1袋では足りないのだ。挽肉と野菜を2回分炒めてその半分だけを卵とじにし、残りは明日の販売分として残しておくことにした。

12/27の夕方は現金60ペソ、ウータン90ペソ。8の倍数になっていないのは子供からのリクエストに応じてさらに半分に切り分けたものを売ったり、これまた子供からの提案で挽肉増しのデラックス版を作って売ったりしたためだ。1袋すべて売れば192ペソになる計算だが、不足の差分は私のお腹に収まった分だ。味見したらおいしかったので今回はそのまま夕食になった。

7時半に閉店とし、続けて自家消費分の「食べるラー油・肉入りバージョン」を同じフライパンで作る。こちらも砂糖・塩・油を通常の食品の倍ほど入れて保存性を高めているもので、野菜分が控えめながら、忙しいここ最近にはご飯を炊いておくだけで一食食べられるので重宝する。小瓶に入れておくので村へ持っていって、近所からライスをせびればそれで済むので、「機動性の良い」食品である。


翌28日は昼に販売して現金78ペソ、ウータンは100ペソ。

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早くも、両日ともにウータンが現金を超過しているが、上述のように、多くの子にウスターソースの味を体験してもらい、次の販売機会の種を蒔いたということで問題視していない。

ちなみにウータン回収の方は2月現在あちこちで焦げ付きの様相を見せている。トホホ…