フィリピンでピザ!?

今週のお題「ピザ」

 

私の、村で販売している主なメニューに「ピザ」が2種類ある。
なんてことはない、インドの薄焼きパンである「チャパティ」を「インジャンピッツァ」、皆さんもご存知、お好み焼きを「ジャパニーズピッツァ」と称して売っているのだ。
いずれにしても「チャパティ」・「オコノミヤキ」、では現地の子供は全くわからないのでそうして呼んでいるだけだ。

 

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写真はいちばん最近の「チャパティ」とカレー。ネット上のいくつものサイトや動画を参考にして作ってきたはずだが、改めて検索してみると、これはほとんど(原料も作り方も)チャパティに該当しない…。
打ち粉をするようなことを見たので、当時カレー粉のとろみ付けに小麦粉に代えて押し麦を使っていたのだが、チャパティの打ち粉の代用にすれば香ばしくなっていいのでは と思いつき、やってみたところ、香ばしさに加え、結構クリスピーな仕上がりとなっておいしくなった。さらにはテフロン加工のフライパンなんてものは持ち合わせていなかったので、アルミ製の中華鍋のようなものだったのだが、油を敷かなくても全く焦げ付かなくなった。仕上がるにつれ、端っこなんかは浮き上がってくるほどだ。
写真は自家用の時のもので、最新版は生地に甘酸っぱい桑の実と味わいのある芋蔓を入れ込んである。どちらも良い色合いである。生地はナンやチャパティの練るような固さはなく、それよりはホットケーキの生地に近い粘度である。どうせ焼ければ水分は飛ぶのだから、といい加減な考えで、扱いやすい粘度を求めているうちにどんどんゆるめの生地になっていった。押し麦を少し加熱したところに生地を垂らし、スプーンで外周へ延ばしていく。外周のキワに再び押し麦を振り掛け、もう一度生地を伸ばしてフタをする。
一般的な焼き方といちばん異なるのは片面焼きという点だろうか。ただし今は片面が焼けたらそれを浮かせて油を少量垂らしてひっくり返し、反対側を押し付けて焼いている。やはり少し油があった方が噛んだときに僅かだがジューシーな感じが出る。油で焼いた香ばしさと、麦の焼けた香ばしさのダブルでおいしい。
初めに垂らした中心側と後で伸ばした外周側に時間差ができるので焼けた生地にちょっとした分断があり、一人で食べるときは初めに外周側から剥がしてアツアツで食べる。塩と五香粉を入れてあるのでカレーの他にハチミツやチョコソースなどとも相性がよく、いずれのトッピングも子どもたちに人気がある。
そういえば以前は、ドライイーストを入れて発酵させたものを「ピザ」として売っており、手間と時間がかかるので8分の1カットを20ペソとして売っていたが、現在はそれを入れていないので15ペソで売っている。子供の日々のお小遣いは20ペソくらいなので、5ペソという要望に応じて1カットをさらに3つに分けて販売している。端のクリスピーなところが人気があるようだ。

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写真は少し前の、具の入っていないチャパティ。映っている子はみんな毎回買ってくれる。おかわりがあったりすると、おいしかったのかな と少し嬉しくなる。

 

 

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上の写真は1年近く前か、「ナン」として作って2回目のもの。緑豆を使ってのダルに挑戦してみており、つけて食べるとあっさりして食べやすい味で、どんどんいけたのを覚えている。
添えられているトマトソースも自家製で、20種類近くの原料を使って2〜3時間かけて作るものだ。もちろんフィリピンにもトマトケチャップなどは売ってあるが、あり得ないくらい砂糖が入っており、お金を貰っても食べたくないシロモノだ。

 

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これも始めの頃の「ナン」。硬めの仕上がりだったかな。熟したカラマンシー果汁をつけて食べても、素朴な感じで食べやすかった。緑豆の中の黄色いのはフィリピンのサツマイモ。
 

 

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フルーツピザというのも作った
ことがあったなぁ。カスタードクリームを作るのが少し手間だけどその分、おいしさは間違いない。男の子にカスタードを試食させると、おいしさのあまり 文字通り飛び跳ねて喜んでいた。もちろん私の腕がいいわけではなく、参考にさせてもらったレシピサイトのお陰である。1980年代なんかにフィリピンに来ていたら、こうした情報も無く、グーグルマップもなく、グーグル翻訳もなく、大袈裟な言い方ではなく生きていなかったと思う…。


 


 

 

そしてもうひとつの「ピザ」、お好み焼き。

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具材はイカ。それが手に入らないときは干しエビを多めに入れる。その場合でも自家製のウスターソースとトマトソースがおいしいので充分にお好み焼きとして通用する。というか2つの自家製ソースを味わってもらうためにお好み焼きを作っているようなものだ。もちろん単体でもおいしく、干し野菜を素焼きしたものをウスターソースにさっと浸してベジタブルバーベキューとして いつかメニューに投入してみたい。鶏の臓物のBBQが夕方の道端でやっているが、それなんかよりずっとおいしくヘルシーな自信がある。
キャベツの仕入れ価格によって1カット25ペソか30ペソ。イカに代えて豚肉のときは5ペソ値上げにする。

そして紅生姜はなんとオドロキの南国フルーツ味。生姜の辛味と、ナイショの調味料(?)の甘さの絶妙な出会い。これを食べる度に日本の皆さんに申し訳なく感じる。「日本よりおいしいものを食べてみんなに悪いなー」なんて呟きながら食べるのである。悪いのは私のアタマである。
まぁ、甘くて且つ赤色に着色できるモノなんてフィリピンで一週間も生活(買い物)していればすぐ見つかるので気になる人は是非フィリピンを訪れてください。

フィリピンに渡って2年目だったか、市のビジネス許可が外人には降りないようだったので、露店を強行するとどうなるか、というのが気になってしまい、本当に市場の夕市に手作りの台車で出店したことがあった。位置について用意をしていると、「プレジデント(代表者)」という恰幅のいいご婦人が出てきて許可証はあるの?とストップがかかった。まぁそうなるか、と片付けていると、今日だけはいいよと言ってくれた。

見慣れない中国人がナニか料理を始めたぞと、夕闇のなか 人垣が2重3重にできていく。40センチ近くの中華鍋で30センチ近くのお好み焼きが宙を舞ってひっくり返ると、「オゥ!ベテランー!」との声。 ソースも5種類かけて出来上がるが、いざその段になると一番乗りは腰が引けるのか、誰からも声がかからない。仕方ないので私がとりあえず一切れ食べるか、と紙皿に取ったところでオーダーがかかりそれからはずっと売れ続け、8切れはあっという間に売り切れてしまった。食べたのかおばちゃんが小走りで来たがもう品切れ。こうして一日だけのお好み焼き屋は閉店したのである。
店を開くにあたってネットでフィリピンでの事例を検索したのだが、ショッピングモール内に出店していたりしたのは、上手くいかず ほどなく撤退したよう。フィリピンの人は結構 食に保守的なようだ。その点、私は好奇心の旺盛な子供から攻めているので問題ない。
原料にしても、日本食料品店でお好み焼きソースを仕入れたりしていて、確かに日本と同じ味になるのだろうがそんなことでは原料費が高くついてしょうがない。お好み焼き粉も既製品を使っていたのかも。賃料にしても私の方はそんなものは存在したことがないのでずっとローコスト経営である。キャベツも高値のときは別のメニューに切り替えて、お好み焼きは作らない(レパートリーが多いとそういう事ができる)。徹底したコスト管理である。

 

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次回の村はリクエストのあった「インジャンピッツァ」を作る予定だ。


投稿の末尾に「フィリピンの闇」と題して、私の目で見た、耳で聞いた、ヒエ〜〜となる話を毎回お送りしていこうと思っていたのだが、長くなったので次回から。全50回くらいはいけるでしょうか。おたのしみに。