つづいてのメニューは…

 

4日間立て続けに仕事を入れ、さすがに疲れが出てお休みを2日挟んだ。疲れた状態で仕事をしてもミスをしたり、いたずらっ子の対応にイライラしたりロクなことがないからだ。

今回のメニューは、ハンバーガーに続くウスターソースを使った料理、お好み焼き。ウスターソースを作る時間を考慮に入れなければ、実はこのお好み焼きが、調理時間あたりでいちばん利益が高い。8つに切ったその1切れを村では20ペソ、市場では25ペソで売っており、1枚焼けばそれぞれ160ペソ・200ペソの売上げだ。*1

さて、買い物リストを手に市場へ。しかしキャベツの値段を訊いて、その返答に耳を疑った。1/4kgで40ペソとのことだが、これまでのキャベツの値段は1kgで40〜60ペソが相場であり、1kg160ペソなど聞いたことがない。お好み焼きにしたって、テント市 で15〜25ペソで投げ売りしているのを買えたときに作っているもので、その8倍くらいの値では利益があがるわけがない。白菜でお好み焼きが作れるのかどうかはおいといて、その値を訊いてみるがやはり似たような値段。コロナ禍で値崩れが起こったということだが、それはもう昔のことなのか?

さぁこれでメニューが白紙になった。今日もお休みにするつもりは無く、仕事用のノートをリュックからひっぱり出す。調理を始めなければならない時間は迫っており、今から間に合う、且つ安価な食材で、年末セールに似つかわしい珍しいメニューは、と頁を繰る。怒涛の予定組み替え、ウデの見せ所である(日本に居たときの仕事スケジュールの組み替えを思い出した)

どうにかして、冷やし中華ならこの全てを満たせると思案、メモを書き直して買い回る。
市場をあとにしてしばらく歩いたところ、肝心の麺を買い忘れてることに気がついた。大きな間違いほど気付きにくい。沿道のタリ パパ(露天商)を見るが細麺が無く、市場まで戻ることに。現在もPass Slipという通行証が入場に必要で、消印がなされるため一日に一回しか使えない。果物商が市場の外周に配置されており、顔なじみの店主にお使いを頼んで事なきを得た。


ここフィリピンにおいては、冷蔵庫のない時代の遺物とみられる料理がそこかしこで見られる。よく火を通すため揚げたり(fried fish)、保存性を高めるために塩や砂糖を多用したりしたしている(banana cue)*2
そんな具合なので、毎日が油・塩・砂糖の祭典である。そこへ今回の、冷たくさっぱりした冷やし中華の投入だ。宣伝には現地の耳に馴染みの良いよう、マラミック・パンシット(冷たい焼きそば)とした。

冷やし中華がウケることは、これまでに何度か 親しくなった人たちに作って振る舞ってあげたことがあるので わかっている。冷たい麺と多彩な具材が売りのこのメニューもハンバーガー同様、普通に作っては利益が出ないので、具材の方を絞っていく。今 数えてみたところ、仕事用ノートの原レシピには 19種類が具材の候補として列記されている。これまではその中から半分くらいを選んで作っていたのだが、今回はさらに絞って、外せないものだけにしていく。
そうして選ばれたのが、薄焼き卵、トマト、オクラ、干しアミエビ、の4つだ。トマトは相変わらずの高値だが彩りとして欠かせないので、5ペソで2個だけ買って、薄く切って添えることにした。
ピクルスもおいしく仕上がっており、酸味と酸味でケンカしないだろうと入れることに。

 

村へ向かい、準備室?から台車を出動させる。氷(5ペソ)を買わなければならないが、調理中に近くのサリサリストアに買いに行こうものなら100%調理器具か食材が無くなるので、前もって買ってタオルに包んでおいた。

冷やし中華のタレもネットや市販品の原材料欄を参考に、これまた現地特有のものを加えて完成させた配合である。今回は畑の方で混ぜ合わせ、村で野菜を切ってしまえば、あとは薄焼き卵を作って麺を茹でるだけである。

今回も風の少ない廃民家*3の陰に陣取って店開き。
卵を焼いたあと、同じフライパンで湯を沸かす。ガスもタダではないので熱の有効利用だ。フィリピンの細麺は特にのびやすいので再び沸騰したところで湯からあげる。同じフライパンだと今度は氷の方早く溶けてしまうので、今回は別の釜を用意し、二度 水で粗熱を取って氷水に晒した。

ザルという文化的なものは持ち合わせていないので、水切りには不織布を使った。これは3年前だかに日本に帰ったときに西成のダイソーで買ったもので、我ながらナイスなチョイスである。料理に使おうと思って買ったわけではなかったはずだが、今はこうしたことなどに重宝している。一方 フィリピンでは、やはりというか、こうしたニッチながら痒いところに手の届くアイテムというのは、改めてDIY店やショッピングモールを見てみても置いていない。面積がだだっ広いだけのアメリカ式の倉庫型店舗が全てなのである。


今回も、冷やし中華の味を多くの子に知ってもらおうとウータン率は高め。

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女の子が手にしている小さなカップの7分目くらいの盛りで5ペソ。
写真の左下には 味の要、ゴマ油のビンが見える。

左の子はウータン申請がこれ以上通らず やや不満顔。
「ウータンする!おいしいから!」。借金する理由が「おいしいから」。おいしいならなおのこと身銭を切って買うべきだと思うのだが 私の考えの方が間違っているのか。
箸にチャレンジしている右の子は、日本の子供はみんなこれを使えるの?とのこと。このあとウータンで冷やし中華を食べ、あなたの料理は全部おいしい!と絶叫していた。おいしかったのを伝えるのに なにも大声を出す必要はないと思うのだが(味皇大阪城みたいなものか?)。

今回は総コスト86ペソに対し、全量は140ペソ、2倍にすらなっておらず利益が悪い。@5ペソではなく8ペソにすべきだったか。

原っぱから帰るときには上の2人にガス台やバッグを持ち運んでもらい、ウータンマイナス3ペソとした。台車で行くと、車輪が石に躓いたとき一発でバッグなどが飛び出てしまうのだ。ゆっくりとしか引けず台車の意味が薄い。次回からは、バッグは台車にくくりつけて、フライパンは紐をかけて肩から提げて行くことに変更。

*1:営業許可さえ下りれば、隣の市で1切れ35ペソでも売れると思っている。そこの夜店で売られている28ペソのピザよりも珍しく、35ペソのケバブよりおいしい( ※ 個人の感想です )のでその価格で問題ない。夜店を出したときの活況の様子は過去記事参照。1時間で3枚焼けるとして280✗3で840ペソ、イカを増量したとしてもフィリピン人男性の日給(400〜600ペソ)くらいはすぐに稼げそうだ

*2:乾季の定番のおやつ、ハロハロ(かき氷)も、終戦後になって日本人が始めたのが起こりとされている

*3:正確には建築中に放棄された家。もしお金が入ったら再着工となるはず。これは、フィリピンにおいてはあるあるの工事スケジュールで、経済の中心地マカティ市に於いても、建築途中で資金が尽きたのか金回りが悪くなったのか、造り差しの高層ビルが苔をむして あちこちで崩落の危機を迎えている。金融街を闊歩するのも命懸け、修羅の国 フィリピン