セカンドライフ inフィリピン

今週のお題「理想の老後」

現役を退き、孫に囲まれて、多少ゆとりのある年金暮らし…。
というのが昭和の頃は「老後」という語感に含まれていたのだろうが、今となっては晩婚化・非婚化によって孫どころか子供すらあやしいし、賃金はそのままでジワリジワリと上がっていく物価や税金や保険料。頼みの綱の年金も受給開始年齢がジリジリと上がっていき、受給額もどうなることやら。政府は高齢者でも働きやすい環境作りを、と爺さんになっても元気な人は働いてくださいと言い出す始末。

そんなイメージを纏いだした「老後」というやつを、ここではひとまず「社会の第一線から退いていること」と大きく括り直しておこう。
社会の第一線、というのは会社などで働き、そして租税を収める立場を指すのだろう。そしてそこから退いているのが「老後」。

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ゆったりと水に浸かる水牛。雨季の雨水が溜まっているのは、伝説のヤマシタ金塊が眠ると云われるこの地方で 今年になって重機で掘られた大穴。その穴との対比でスケールがわからなくなっているのだが、とても大きな丸々とした水牛である

しかしそうすると、海外渡航届を出して税金からも各種社会保険料からも開放されている私は30代にして既に「老後」に入っていると言えるのかもしれない。
それにしても、そうした人生の区切りさえも会社や社会との関わりとしてしか立ち現れてこないというのも日本人の哀しき性分か。

立ち代わってこちら南国フィリピンに於いては「学業を収めたあとは就職して、定年まで勤め上げる」といったライフコースは少なくとも理想形としては存在しない。実家に当面の資産があればあくせく働かなくともそれが普通だし、お金が無くなったら働けばいい(「無くなりそうになったら」ではないところがミソ)。逆に、自分の意志で 老いても体が動く限りは働いてもいい。つまりは全てが自分の勝手なのである。

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雨季になって河口や浜辺に漂着した木や竹を集め、木炭を作っているところ。訊けば一山1000ペソにもなるという。「ブラックゴールド」とのこと。後で掘り出して大きな袋にまとめ、トライセクルに載せて市場などに運ばれる

かくいう私もフィリピンに身を置いているので、毎日が自由気ままである。
もちろん、生活を成り立たせていくうえで必要な作業というのはいくつかある。

 

まず炊事に使う薪として使うための流木拾い。(中型のガスタンクと一体になったガスコンロを持っているのだが、市場での仕事に使うために 友人の働いている市場内のお店に預けてある。今は雨季のため、薪が切れてしまったときのホケンで自宅に引き揚げてきている。)薪は数日で切れてしまうので、そうなる前に海に拾いに行かなければならない。行き来には村の中を通るので楽しい。雨季中は河口の形が行くたびに変わるので、それを見るのも楽しみにしている。
大雨が続くと上流からはありとあらゆるものが流れてくる。一番驚いたのは、豚の死骸が一頭丸々漂着していたことかな…。犬と鶏はときどき。
ペットボトルを拾っていたときのやり方を踏襲して、ポリ袋(60〜70センチくらいの丈のもの)2つをビニール紐で繋いで一組にして両肩に提げれば4つまで運ぶことができる。ビニ紐が肩に喰い込むのはタオルなんかを挟めば解決するのだが、総量が重いのは如何ともし難く、朝からヘトヘトになってしまうので現在はほどほどの量にしている。

そして市場への買い出し。毎食食べるなら3日ほどで無くなる1キロ(※27ペソのベトナム産備蓄古米。国産米は40ペソ前後)のお米を、というか、好物のバナナも切らせたくないので、鮮度のこともあって市場へは2日に一回は行く。以前はほぼ毎日行っていたが、時間と体力の節約のため少しセーブしている。近所にコイン式ネット店ができたので、ネットはそちらで済んでしまうからというのもある。

この浜と市場というのは、自宅を挟んで正反対の方向(それぞれ1kmほど)にあるのだが、朝早くに家を出て浜で木々を拾い、7時に学童を載せて村を出発していくジープに乗れば、浜と市場を同時に攻略できる、という裏ワザがある。大袋に集めた薪は自宅前で停まってもらい、部屋の前に置きに行く。ジープに乗ったまま 門前に投げ置くこともある。

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走行中のジープ。学校は学ぶところではないので、みんな行くのが楽しみ (…えっ?

他には、畑での野良仕事。雨季の間は水やりの手間が省けるが、雑草の伸長が著しく今度は草むしりに掛かりきりとなる…。球根方式の雑草があることが判明し、地表の草だけをむしってもダメなよう。耕して小さなそれを注意深く取り除く。数日後にもう一度耕すことで白く発芽しているそれを格段に見つけやすくなり、これでほぼ全て取り切ることができる。

 

こういったことに、あとは自分のしたいことを予定に入れていく。昼の市場や小学校にドライカレーなんかを売りに行く。夕方の村で料理を作って売る。地域のいろいろな場所に変わりはないか見に回る。子供と遊ぶ。隣りの市などに買い出しに行く。新しい料理を作ってみる。などなど。

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市場2階でのひとコマ。放置してあった段ボールを使って少年と少女が通行人にイタズラを仕掛けている。頭が出ていたり、不自然に段ボールが通路の真ん中にあったり、草履が段ボールの傍にあったりと、仕掛ける前のメーキングの方が可笑しく、久々に腹を抱えて笑った。 仕掛けるタイミングもどうもワンペンポ遅れている。最後のコマはようやく良いリアクションをしてくれたトンボイ(オナベ)氏。このあと、腹いせに段ボールに蹴りを入れていた…

 

夜や朝に予定を考える時間が一番楽しいかもしれない。
既に「老後」に入っているとともに、「理想の」の方も既に満たされているように思われるのだ。これが私の「理想の老後」であり、これ以上欲を言うとバチが当たる。