最近の「カレー inフィリピン」 Part1

ドライカレーは生業として時々作っているのだが、じゃあカレーライスは作れないのかと検索をしてみたのが今年の3月だか4月だか。結構簡単に作れるということがわかり、近頃は週に1〜2回くらいのペースで作っている。というわけで、「最近のカレー」を写真とともにお届け。

初っ端から番外編のような感じになってしまうが、まずは半年ほど前に買ってあったインスタントのカレーうどん。市場で法蓮草が安く売っていたので 今こそ卵を割るときか、と開封

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とろっとしたつゆに、辛味と甘みのバランスがよく、スパイスもビシッと決まっている。日本のクオリティすげぇ、と思わず唸る。ちなみにフィリピンにしばらく住んでいるとインゲンが料理に入っているだけでフィリピン料理っぽく見える。f:id:taippii:20190324143514j:plain
購入価格は58ペソ、マニラ首都圏パサイ市の日本食材店にて。正麺シリーズが日本でいくらで売られているかは知らないが特売価格298円とかはありそうなので、仮に@58円としてこれの単位だけをペソに変えた場合がこの58ペソ。現在 1ペソは約2.2円なので、日本で売られているものの2.2倍の@約128円ということになる。首都圏の日本食料品店では輸入したものは2.5倍から3倍くらいとなっているのが普通であるが時々それよりやや安くなっている場合がある。目ざとくそれを見つけたので奮発して(?)3パック買った。
今度はこの58ペソというのをフィリピン側から見てみよう。小皿の肉の料理と茶碗一杯のご飯で30ペソ(田舎の安い食堂にて。日本の定食屋の漬物くらいの小皿に肉料理がほんの少し盛られているだけ)。これが二回食べられるので、まぁ贅沢の部類に入ってくるか。同じ田舎の食堂でも店を選べば、上等の部位が使われて1.5〜2倍の盛りで出てきてご飯をおかわりして、という感じで60ペソとなる。(3月24日)

 

 


 

 

高原都市バギオの、輸入食材を扱っている店に、セロリシーズが切れそうになったので久々に買い出しに行くことに。他にも何かいいものがあるといいなぁ、と着いてみると カルダモン、フェヌグリーク、カレーリーフひよこ豆まで並んでた…。見つけるたびに「あっ!」と小さく声をあげてしまった。お手製ウスターソースのためにデーツも探しておりそれも同じ店で揃ってしまった。200ペソと高額だが買うしかない。種を蒔いて数年後にデーツを大収穫、というのを目論んでいる。他、アラビアンな?「セブンスパイス」と書かれているものと、四物に入っている根っこの薄切りのような漢方薬のひとつも買い入れ。ひよこ豆は200ペソ/kgということなので1/4kgのみ入れてもらった。
クミン、コリアンダーはもう持っているし、これでカレーをスパイスから作ることができるはず。
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手書きのレシートの総額は533ペソ。料理、値上げすっかな…。(4月5日)

 

 


 

 

3月から5月はフィリピンでは選挙のシーズン。村に着くと子供も含め人影がまばら。みんな演説会に出掛けていったとのことなので私も向かう。海の村の近くのリゾート施設でバスケコートを貸し切っての演説会を行っているのだ。
会場脇では村の主婦たち何人かが飲み物や軽食を売る臨時の売店を設けている。とても主催者やリゾート側に了承を得ているとは思えない。私も出遅れはしたがその近くで参戦。
ちなみにこのイベントは演説会の体裁をとっているが、内容は「バラマキ」に近いものや子供のダンスコンテストなどエンターテイメント性が強い。
会場を少し外れるとかなり暗く、初見ではよくわからない料理となっているが、それでも子供たちは買っていってくれる。私の作るものならまぁ間違いはないだろうということだろうか。ナイロンの小袋を切ってシート状にして子供の掌にどんどんサーブしていく。最小のオーダーは5ペソ。おかわりやウータン(借金・後払い)の子も。大人たちから見たら、外国人が暗がりで得体の知れない食べ物を子供に売っている、ということになる…。大丈夫なのだろうか。
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4/28

写真は屋根付きバスケコートとその脇の正規の?売店。 別の所にはクーラーボックスとプラスチック椅子だけの「臨時売店」がいくつか。 

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この日も自分の食べる分を残して完売。カルダモンを初投入、なにこれ超おいしー!(4月28日)

 

 


 

 

 カレーは作れるようになったものの、もっと手軽に一人分のカレーを食べることはできないかと考えたのが、というか思い出したのがイワシ缶詰のカレー。開缶してカレーパウダーと乾燥させておいた粗刻み赤唐辛子(畑から収穫)を入れて混ぜるだけで簡単においしいイワシカレーができあがる。それだけでは芸がないので、炊飯時にいっしょに野菜と豆を入れる。フライパンを使わないのでひと手間省けている。写真はじゃが芋、人参、コーンと金時豆の入ったもの。金時豆は長時間浸水しておいてもご飯といっしょに炊くだけでは柔らかくならず、最近は別の豆を使っている。先日たまたまネットで見かけたところ、その豆は黒目豆といってカレーの本場、インドでもちょくちょく使われているらしい。80ペソ/kgにて仕入れ。
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現地に来て教わったのだが、缶の開け方は写真のように包丁を突き立ててもう片方の手で缶とともに少し持ち上げて、その状態で軽く机に打ちつける、というのを繰り返す。そんなことをしたら刃がこぼれてしまうのではないかとなるが、フィリピンの包丁はどの家庭のも鈍(なまく)らなのでこれ以上 鈍らになることはない。私は大家さんの余っている包丁をもらったのでそれを開缶専用にして使っている。

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トッピングはコリアンダーとセロリシーズ。生のセロリも散らしてみた。(4月24日)

 

 


 

 

 豚肉と豆を煮たパウチのパックもあったのでこれもカレーになるかと試してみた。しかし、BBQソースと銘打たれているものの 砂糖が多く入っておりカレーパウダーを入れてもカレーにならない。恐るべし、フィリピンテイスト…。量も100グラムはさすがに少なすぎる。失敗の一作。肉入りの即席カレーへの道は遠い。

5/2

 添えられてるのは畑で採れたキュウリ(のピクルス)とオクラ。(5月2日)

 

 


 

 

自家分で作って余ったカレーをカレーうどんにリメイク。水と醤油を足し、昆布の代わりに 海ぶどうの隣でいつも売られている現地の海藻を入れる(今調べてみるとこれが一番近い)。片栗粉も入れて 見た目も味も予想以上にカレーうどんで、おいしく完食。

5/9

麺は例によって日本食材店で買ってあったもの。35ペソ。 フィリピンの中華生麺は500グラム入で20ペソ。これで2.5人分ほどなのでそれと比べると割高である。うどんも自前で作れないか、と今後の課題が挙がる。

 

 


 

 

使い残した海藻を使って福神漬けにトライ(食材をどんどん使い回しているとなにかのパズルゲームをやっているようで楽しくなってくる)。まぁまぁ近いところまで寄ったが、赤シソが欲しかった…。茶色のは干し椎茸。他は白ごま、生姜、人参、大根、褪色しているけどキュウリ。

5/10

5/10

福神漬けも引っさげて、村にて販売。大人には下の写真のようにサーブする。35ペソと村にしては強気の値付けながらも男性からおかわりを求められるなど、この日も完売できた。釜のなかの容器は500mlしか入らないので もうひとつタッパーを集金カバンのなかに入れておき、少なくなったら移し替えるというやり方をとっている。炊きたてのご飯に囲まれるかたちになるので保温はバッチリだ。5/12

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スマホでゲームに興じている中央の男の子はサリサリストアの子供。お金が少しあるのでほぼ毎回買ってもらっている。他の子はウータンが多いかな。でもきちんと払ってくれる。

今回、ヘビーユーザーの少女の発案・要望で、ナイロン小袋は一辺だけ切り開いてすり鉢状としそこにサーブすることに。これなら小学生未満の掌の小さな子でもこぼさずに食べることができる。(5月11日)

 

 


 

 

雨季に入り、夕方に大雨となった場合はさすがに村に売りに行くことができない。それを見越して、昼の市場・小学校では販売可能として、夕方が中止になった場合でも自家消費の2、3食くらいで食べ切れるように減量verで作ってみることに。
5/17

 市場で唐辛子だかピーマンだかの葉が食用として売られており、それをヒントに彩りとして採用してみた。味はそこら辺の草から青臭さを少し抜いた感じ、食べようと思えば食べられる。近所にできたコイン式インターネットカフェと、村のよく知っている子供に売りに行き、あとは自家消費3食で完了となった。
ちなみに最初の味見では今ひとつであり、塩・砂糖・リンゴ半個・ウスターソースを足して、まぁ人様に出せるラインに持っていった。できあがりのイメージを持っておいて それに何が足りないかがわかっていると、修正することができる。不味く仕上がってしまったのは問題ではない。
それからこれは当たり前なのだが、不味いのを提供すると後々のオーダー減に直結する。どうしても満足のいかないものができてしまったら販売中止という決断もしなければならない。(5月17日)

 

 


 

 

入手可能な限り、最近のカレーにはマンゴーが入っている。毎回、商用の料理にあたっては原材料をノートに書き出しており、それには原料費を計算・確認するため購入金額も記されている。マンゴーの項でその隣に書き込まれている数字は「0」。つまりタダで仕入れができている。そこらじゅうに落ちているのだ。
写真のマンゴーはその中でも特に大きなサイズ。いつもと違う道で手に入れた。手に持つとずっしりと思い。一緒に写っている包丁が小さく見えるが普通の文化包丁である。果物ナイフではない。
これを全部使うのは多すぎなので半分ほどカレーに入れた。

5/24

5/24

私はどちらかというとそのまま食べるマンゴーは好きではない。トロピカルな桃のような香りにかぶりつくが なんだがクセのある味が口に広がり、うーんとなる。マンゴーも結構種類があるのでなかにはおいしいものがあるのかもしれないが、現時点では好きな果物ではない。
カレーを作るようになってから市場への道中でマンゴーが落ちていれば1個か2個拾うようにしている。使わなくて傷んでしまってもそこらへんの山羊にあげればいいので楽だ。(5月24日)

 

 

ドラゴンフルーツの季節

今週のお題「わたしの好きな色」

 

フィリピン北部は雨季に入って半月くらい経つ。数日前、マニラ首都圏も雨季入りしたと新聞スタンドで見出しが出ていた。

そこで最近出回りだしたのがドラゴンフルーツである。常夏の地域とはいえ(農産物はともかく)、フルーツにも旬というものがある。6月と7月はドラゴンフルーツとライチの季節だ。

鮮やかな色のフィリピン産ドラゴンフルーツ

写真の鮮やかな紫色のドラゴンフルーツは、最寄りの市場のテント市の日(6月20日)に買ったもの。小ぶりだが甘みはしっかりある。その時点でに価格は大玉は1Kg120ペソ(250円くらい)、子玉で同80ペソ。私の買ったのは小玉なので1個15ペソだった。

 


 

本日もテント市であり、行くと小玉やキズモノが半値の1Kg40ペソ(80円ちょっと)で売られていたので1.5Kgを買い込み、60ペソ(120円ちょっと)の支払いとなった。1個10ペソ以下。
小ぶりのもの8個買うことができたので「ドラゴンフルーツ食べ放題コース100円!」と銘打ったとしても、あながち嘘とはならない。 

さらに隣の市へ行けば特大玉の古くなったものが1個10ペソで投げ売りされている。外皮が古くなりその一部は茶色くグズグズになっているが皮を剝けば中はなんともないので、見かけたら何個でも買っている。

ライチも先週から店先に並び、これは1Kg240ペソ。5ペソを見せてライチの実を1個だけ買う(写真左側)。こんなおかしな買い方をする客はあまりいない。だいたいのフルーツ商はデジタル表示の電子秤を持っていて以前6個で30ペソだったので、1個5ペソだろうと手渡すわけだ。電子秤はキロ単価の数字ボタンを押せば簡単に売価が表示される。ライチはバギオ市のある山間部の州などから。下落すれば1Kg200ペソくらいにはなるか。傷んだものは安売りされるが、その分品質は悪い。しかし、お酒の味になってきていると思えばそんなものであり、私は嫌いではない。

 

 南国のさまざまな果実を安価で味わえるのもフィリピンの大きな魅力である。
バナナもキズモノであれば5本で20円くらいであり、この値段で「甘熟王」くらいの甘くて太いやつが食べられる。バナナが好きだから、というのを永住の理由にしてもよいほどだ。

 

 

 

 

【緊急リポート】売り場がノートの海に!


フィリピンでは新学期が始まるのをBack to Schoolといいます。
隣の市のショッピングモールに買い出しに行ったところ、6/3の新学期を前にした日曜日となり、地元の市場でも同様でしたが、文具コーナーは文房具を買い求める人たちでごった返していました。地元よりいくぶん安くなっているはずで、私もいつも日記用と仕事用の二冊のノートを持ち歩いているので、買い足しておくかと売り場に向かいました。しかし、そこに広がっていた光景とは…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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台の上に無造作に積み重ねられている夥しい数のノートと、それを品定めして 手に取っては投げ、手に取っては投げを繰り返す買い物客…。

 

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元の持ち場を越えて溢れかえるノート…。

 

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子供も多く訪れていますが…、もうね、勉強以前の問題だろ…。

 

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容赦なく踏まれ、轢かれていくノート…。

 

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ガッツリとノートを踏んで行く少女。    ーー我が屍を踏みつけていけ…、ガクッ

 

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テラカオス。どこが売り場でどこが通路なのか、ーーそこをゆく姿は まさにノートの海を割るモーセ

 

 

 

 

一番おかしいのは、この状況を誰もおかしいと思わないこと。特設コーナーなので店員さんは増員されているものの、この惨状を修正しようという動きはなし。低い椅子に座って談笑する通常営業。つか、その椅子の脚でも一冊のノートを踏んでいるし…。

 

2019年の、私のなかのフィリピンびっくり大賞はこの光景で間違いないでしょう。

みなさんはどう思いましたか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数年後、そこ(日本)には学業を修めたフィリピン人 数十万人の押し寄せる姿がーー。

 

『マニラ午前4時』は日本を応援しています\(^o^)/





 

 

日本に迷って



三年前、私は日本で道に迷っていた。もちろん物理的ではない方の道だ。

私は二回転職したもの、同じ職種で十年ほどの経験を積むことができ、おかげさまで最後の方は人様程度のお給料がもらえるようになっていた。ただ一方で公私(という言い方はあまり好きじゃないのだけれど)でいろいろなことがあって仕事に対するモチベーションが、自分の思っているそれの下限になんだか近づいているような気がするようにもなっていた。
それの原因というべきか結果というべきか、そうしたものはいくつかあって。ひとつは、私の職種はお客さんの困りごとを直接解決する部類のものだったので、お客さんの喜んでくれる姿が大きな励みになっていたのだが、それが少しずつ薄れていったこと。
それからもうひとつは、お金というものの価値がよくわからなくなってきたことだ。中2のときに教室の床の木タイルの隙間に落ちているシャー芯で済ませられるんだと気がついてから一度も替芯を買うことなく学業を終えたくらいにドケチであった私は、成人後も本とマンガとCDくらいしか定期的な支出は無く、実家住みだったこともあって、給与は銀行の方にどんどん貯まっていった。しかしいつのころからかそんなに貯めてどうするの? というふうにも思うようになった。もらったお金で何を買いたいのかな、そもそも欲しいものはあるのかな、あったとしてそれはお金で買えるものなのかな。
そこそこの額面がたまっている預金通帳を前にしてコレジャナイ感が頭をもたげてきた。この感じはどんな状況に近いのかな、今月から給与の支払いが日本円ではなくインドのルピーになりました、お買い物の際はどうぞインドで、とか、パチンコで大当たりしたけど(私はパチンコはしないのだけれど)景品交換所は隣の県にございます、とか、といったあたりかなぁ、と仕事の合間に考えていた。
モチベーションの低下を感じるなか、仕事に対して意識しないうちに手抜きが出てくることを私は恐れた。手を抜こうと思えば多少は抜ける職種である(実際、技術職のくせに、手ではなく口で仕事をやっつけてくる輩もごくごく一部ではあるが居た)。私は古いタイプの人間なのか、仕事そのものへの礼儀というものを持っていたのかもしれない。当然その「節度」を下回る状態で仕事にあたるわけにはいかない。


マニラ首都圏パサイ市内にて。鍋底の穴を薬品も使って溶接する高齢の職人

そしてその、知らずしらずの手抜き感が人生の手抜き感に通底しているように思えた。でも「人生の手抜き」ってなんだ?

モチベーションの低下に伴って、最後に決定的だったのは、これは予感とでもいうのだろうか、このまま仕事を続けていると、全く別の方向から思いもしなかった厄災がやってくるのではないかという漠とした感覚を持つことになったことだ。技術的な失敗や作業中の事故などではなく、大きな交通事故を起こしてしまうとかもっと別の類いの…。
ここにはあまり長く居られないな、そうぼんやりと考えた。

時々、ニュースを見て思うことがあった。巨額の詐欺事件や宝石店荒らしの逮捕の報道があったりすると、なんで逮捕されるまで悪行を続けたのだろうか、と。慎ましく暮せば一生いけるくらいになったところでやめておけば捕まらなかったのかもしれないのに。なんてくだらないことを考えていた。
しかし私にとって今がその「足抜け」の時ではないのか。


出番の時間を控え、椅子に座っているクラウン

その年の九月の売上げは自己の最高を更新し、私の会社の給与体系は基本給はあるものの歩合制だったので、この売上げはそのまま最高の月給となって私の手元に渡った。夏の繁忙期が終われば、少なくとも来夏までこれが更新されることはないだろう。そのことを思うと、ひとつのファミカセを全クリしたような、つまり達成感と終わっちまった感が混ぜこぜになったような感じがした。
ファミコンにはウラ面があったけど、人生にはウラ面ってないのかな。一本のファミカセをまた始めからスタートするけど、ウラ技を使って全く別の面に行ったりするやつ。画面がバグったりして、得点や敵を倒すのが目標ではなく、バグった面を切り開いていくことそのものを楽しさとして享けるというような。
その夏の前後ごろからか、図書館でフィリピンに関する本をいくつか読んで物価差は五倍になるということを私は知っていた。つまり円を持っていけば単純計算で五倍の買い物をできるということだ。これをファミコンに当てはめればバグ技だ。現地の人と同じような生活水準でいけば、一生は無理でも年金が出るころくらいまでは保つだろう。言葉はもちろん、文化や考え方も随分違うらしい。うん、これはウラ面だ。
私が学んだところに拠ると、私たちは様々な「物語(虚構)」、つまり本やドラマやアニメなどに(さらには友人関係やコミュニティについても)一時的に「没入」して楽しんで、それが終わる都度に抜け出しているが、唯一その主体である「私」という「物語(虚構)」からは抜け出せないという。それは本当だろうか。人間は社会的な存在であり、周囲のひとの見方や関わり方によって「私」という人間が浮かび上がってくる。それならばその周囲の「役者」がすべて刷新となった場合は、また違った「私」が立ち上がってくるのではないのか。
ウラ面に潜り込もう。ゲームのルールを変えよう。ルール自体がゲームとなるように。
そう私は決めた。

10代の頃から少し気になっていた東南アジア念頭に、タイやベトナムシドアルジョの泥火山も魅力的だったけど、英語圏で距離も一番近く、ちょっと危険な香りもあるフィリピンを選んだ。

十月末で退職したいと会社の人に伝えたが、まだ業務量が多く次の新しい人も見つからないからと十一月末となった。さらに十二月末日より一日でも前後すると自分で税務関係の申告をする必要があるから、という話を持ち込まれ、真偽を確かめるのも手間だったので、それに従って大晦日まで業務をこなした。

年が変わって一月、パスポートをネットで下調べして取得し、二月の便でフィリピンへ飛んだ。初めての海外旅行である。同行者も居なければ現地にツテがあるわけでもない。
マニラ国際空港のエントランスを出た私は、南国のむわっとした暑気に当てられ着ていたフリースを脱ぐ。そこからの一週間はなかなかのハードモードだったのだが、その話はまた別の機会に譲ろう。


「道に迷う」というのは、まず地図や思い描いたものがあって、それから外れてしまって初めてその言い方ができる。
地図も予定も計画もないこの国では、「迷う」といったことはできない。 ただ今日があって明日があるのだ。

 

淀んだ川に常緑を挟んで向かい合っている遠景は陽炎かそれとも…









頭上クラウドファンディング inまにら北部



【プロジェクトの目的 】海岸部に漂着しているプラスチックゴミを雨季が来る前に回収し、高潮による再流出を防ぎます。なお最近の研究によると2050年には海洋に存在するプラスチックゴミが魚の全体の量を上回るということです。

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クラウドファンディング至った経緯】
地元のエスタンバイ(仕事をせずブラブラしている人)に仕事を紹介する形で海岸清掃に着手しようとしましたが、半日で回収したプラスチックをジャンクショップに持ち込むと約40ペソにしかならず、プロジェクトを安定的に継続していくため、当該地域の非農業の日額最低賃金280ペソの半日分にあたる140ペソとの差額を募らせていただくことになりました。
1回100ペソとして、当面30回の作業を予定しておりますので3000ペソをクラウドファンディングします。雨季の到来によって、泳いで渡っている河川が増水した場合はプロジェクトを中断いたします。

 

【現在のステータス】
このプロジェクトは、2019-05-03に募集を開始し、1人の支援により3,000ペソの資金を集め、2019-05-03に募集を終了しました。

 

【リターンについて】
定期的にウェブ上にてレポートを掲載いたします。

 

 


 

 

【 現地調査 / 4月12日 】
漁村のある北側(写真上側)から、乾季で河幅が狭くなっている河口を南側へと泳いで渡った。

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河口から200mほど歩いた地点のパノラマ写真(クリックで拡大)。多くのゴミが打ちあげられている。

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【 調査捕集 / 5月3日 】
ジャンクショップへ持ち込み、買取価格を確認。1キロ当たり4ペソとのことだった。
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【 第一次回収作業 / 5月6日 】 

6袋回収。作業を終えて岸まで運んだところ、顔見知りの少年が川漁をしており、竹のボートで送ってもらった。返礼のお菓子の分、10ペソは経費として支給されるのかと現地労働者の言。知るか。

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村内の民家のポンプを借り、軽く洗浄。

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業務提携している無料ジープに朝イチで村から乗って市場の近くまで行き、3分ほど歩いてジャンクショップに持ち込んだ。6袋で9キロ、36ペソとなった。

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ジャンクショップの構内。多くのペットボトルやプラスチックが保管されている。

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得たお金で朝食をとる。おかずは緑豆を煮たもので、20ペソ。にんにくが少し入っている。スープは無料、ご飯は自宅から、大豆とコーンの入ったもの。手元に残ったのは16ペソ…。

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【 第二次回収作業 / 5月13日 】
サイズの大きい2袋を含め計6袋分を回収。

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10キログラムで40ペソとなった。

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 収益の半分以上が消えた前回の反省を踏まえ、今回の朝食は自宅からお手製の福神漬けを持ち込み、ライスのみのオーダーとした。この場合でもスープは無料でついてくる。ライス一杯で10ペソ。これで手元に30ペソが残る。

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【 第三次回収作業 / 5月16日 】
カメラをビニール袋で二重に包み、泳いで渡って一帯を再び撮影した。
河口すぐ南側の風景。

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そこから南に200mほど歩いた地点。最も多くのゴミが堆積しているポイントである。無数のペットボトルが朝日を受けて光っている。

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今回も大袋を交え計6袋。現地労働者によるシャドウ自撮り。

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しかしキレイになったのは写真の右端のほんの少しだけ…。

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まぁまぁ重いので砂浜の上を引きずってきた。

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袋を担いで村へ帰る途中にキノコを発見。数日前に一度大雨があり、その水分で生えてきたようだ。ご馳走なので迷わずゲット。

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ハンバーグと一緒に焼いて食べた。椎茸とほとんど同じ味。地元の人は軸にリングのあるキノコは毒だと言って食べない。私は少量ずつ食べて無害であることを確認している。君はこの先生きのこることができるか?

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今回は11キロ、44ペソとなった。
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現地労働者はプラスチック換算で220ペソ。栄養状態が危惧される。 って、知るか。

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7時すぎ、荷台を満載にして朝日を浴びるトラック。このあとすぐに出発していった。

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【 第四次回収作業 / 5月18日 】
今回は7袋回収。

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日中の洗浄作業が暑かったため、村内のハロハロ売店を利用。お手伝いをしていたのはクラスメイトの3年生の女の子。一杯10ペソと良心的な値付け。

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夕暮れ時、ボトルを洗う現地労働者。日没後、家の人が電灯を点けてくれたが、電気を使ってまでやることではないと作業を打ち切り、翌朝の6時から作業を再開することに。早朝手当は出るのかと現地労働者の声。知るか。

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提携しているジープがなぜか数日に渡っていつも停まっているところになく、歩いてジャンクショップに持ち込んだ。砂を流してあるので浜から運ぶときよりは楽だ。

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ペットボトルの蓋や割れたプラスチック製品はもう少し高く買ってくれるというので仕分けして村の駐機場に置いてきたため、ペットボトルのみとなっている。今回は40ペソ。

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バジェットミール(定食)は炭酸ジュースを断った場合は30ペソ。昼食を終えると手元には10ペソしか残らない…。

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フィリピンローカルの一日 【仕事オフの日・テントマーケット編 】(後編)

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 張られたテントの様子を二階から撮影。色とりどりの天幕がはためいている。その準備は当日の午前3時台から始まっている…。果物屋さんなどが日中グッタリしてるのはそのせいである。
しかしその張り方というのが、隣接の家のシャッター収納部のエッジに引っ掛けたり、電線に引っ掛けてテンションをかけたりと無茶苦茶である。ロープも低く、テントの中を通るときはよく頭を引っ掛けそうになる。


市場の二階にある食堂の並び。10店分の店舗スペースがあるが現在は7店のみ。経営が難しいようで、ここ一年の内に5つの店が開業してしばらくで撤退していった…。

多くの店が、単品注文の他にバジェットミールと呼ばれる定食のような方式を採用している。陳列されている作り置きの肉と野菜のおかずから それぞれ一つを選び盛ってもらう。30ペソ〜40ペソの価格帯。炭酸飲料は飲食店では通常12ペソくらいのところ、この定食では5ペソの追加で付いてくる。野菜と野菜で盛ってもらうことも可能。肉料理は大体どこの店でもおいしいのだが、野菜の料理はその店の味が出る。無料で提供されるスープも店によっていろいろなので飲み比べをするのも面白い。ご飯やおかずの盛りの量も店によって少し違ったりする。

 


 

 大小のテントが西側と南側合わせて60張り以上。

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 テントの下を歩くときは 上からアクションスターが落ちてこないか注意しよう

 


 

 

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グーグルストリートビューにて。 市場の北西口から南方向を見る。
黄色のは商用ではない私用のトライセクル。

 


 

 食事を終えて市場内を巡る。 

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 一階中央のスペースにてウインナーの拡販イベント。大きな問題点が二つある。一つは対象の食品が冷凍食品であるということ。ご覧の通り、常温で陳列販売されている。階段の近くで吹抜けとなっており、屋根は採光のため半透明。正午前後となれば放射熱がきつくなる。

いや、合計三つの問題点だ。右端の写真の手前(下側)に映り込んでいるのは階段の手摺りである。階段はクランク状になっており、つまり写真の左側にみえる白い壁がクランクの踊場(の下)ということになる。 そう、多くの人が行き交うその2メートルほど下でウインナーが調理陳列されている。多くの日本人がのけ反ってしまうような光景ではないだろうか。ちなみにフィリピンの公設市場というのは、水拭き掃除をしないため、日本のショッピングセンターなどとは比べものにならないくらい埃っぽい。

そして最後の問題点はウインナーの色の濃さである。画像では分かりにくいのだが、かなり赤い色をしている。クレヨンのようなギラついた赤といった感じだ。油で揚げられて料理しているのだが、油が真っ赤に染まっていた…。一本10ペソ。私には試す勇気は無い。

冷凍食品の件についてはこちらのブログがその暗部に触れているが、フィリピン津々浦々、どこの市場の小売店でもこの方式で販売されている…。「地べた」ほどではないが、常温での陳列がスタンダードなのである。もちろん冷凍庫は各店に備え付けられているのだがそこに収まるのはストック分を別にすれば閉店しての夜の間だけである。私たち消費者は、市場で何回溶けて何回凍ったか分からないものを買うことになるのである。 HACCP:Have A Cup of Coffee, and Pray、「コーヒーを啜って あとは祈るだけ」を地で行くということか。

 


 

 

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同じく一階中央のスペースにてウィンナー特設販売所のすぐ隣りで売っているのは、家内製手工業で作られていると思われるアイスキャンディ。おそらくジュースの素と砂糖を溶かして、棒状の袋に詰めて凍らせたもの。問題なのは売り子が小学校中学年くらいの少年だということだ。児童労働はもちろん禁止されているが、労働局から許可をもらえばよいということになっている。果たして この少年の家族は正規の届け出をしているだろうか? しかし小学生がいろいろな物の売り子をやっているのはこの国では日常茶飯事なので、そんなことを気にしていたら外は歩けない。 

 


  

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ぶら下がる枝肉。毎朝4時台から男性が、これまた毎朝入荷される豚を捌いている。手にするのはほとんど鉈のような包丁。それを使って首を落とし、背骨を「縦に」真っ二つにする。6時ごろまではそうした作業が続くので早く市場に来た日なんかはしばらく見学したりする。血抜きがされているのか血が飛び散ることはないのだが、骨の破片くらいは飛んできそうな迫力である。良い部位は朝早く売れるのか昼過ぎに行ってもいつも見慣れた2、3種類の部位しか残ってない。未明から観察するとその差分の部位を知ることができる。料理が好きなわりには豚肉の部位とその特徴を知らずググって知識を仕入れた。日の出くらいからおばちゃんらにバトンタッチ、包丁と鉈の中間のサイズのものを用いてそれを木槌で叩き、骨ごと切り分けてお客さんに売られていく。

豚は概して美味しく、特にロースは日本のものより柔らかく感じる。逆に鶏肉は各部位が小さく、ジューシーさは無い。ケンタッキーなどで使われているものは別のルートのものだろうか、まだ食べたことがないのでわからない。牛肉は水牛の肉なのだろうか、豚肉の1.5倍ほどの値段なのに固くて味も悪かった。スープ取りには適しているのかホルモンや骨肉のスープの旨い店が市場内にはいくつかある。日本で見るような牛肉も輸入品としてショッピングモールのスーパーには置いてあるが 価格は日本と同じ、つまり数倍する。

次の写真は草履店か手芸店か画質も悪く、何を思って撮ったのか思い出せない…。

毎日のように利用するネット店。1ペソ5分、1時間12ペソなのでこれはマニラの最貧地区トンドエリアのコイン投入式路上ネット店と同じ値付けである…。
利用しない少年も他の友達の台を後ろから眺めるのに入店するが、なかなかの割合いでコソドロが混じっている。四回見つけて、いずれも胸倉を掴んで(日本語で)どやしつけてやったが 一度財布をやられてしまった。
小学3年生くらいから釣り銭詐欺を働く者が出始め、中学生になっても置き引きを試みようとする者が結構いる。驚くのは充分な金を持っている家の子息でも財布を狙ってくることだ。では貧しい家の子はどうかといえば、労働をしてお金の価値や大切さを知っていると思わる子でもやはり金を盗ろうとする。日本に居ては考えにくいが、働いたところがカネはカネということか。
ちなみに少女も男女比で3割くらいは居る。村内や小学校も併せて30人以上の少年少女が既に私の中でブラックリスト入りしている…。日本からのお土産があたらないのはもちろん、料理の試食もできないし、料金の後払いもさせないことになっている。取り消されることは余程の善行が認められない限り無いだろう。

 夕食は自宅でインスタントラーメン。人参ジャガイモキャベツと卵と五香粉。最近はこれにゴマ油と海苔を足している。
フィリピンではご飯とラーメンを一緒に食べるのが多数派ということか、乾麺の入りは60グラムほどと日本のものより少ない。それでジャガイモやサツマイモを足して食べることにしている。

 

 

 

 

 

フィリピンローカルの一日 【仕事オフの日・テントマーケット 】編

今回は「仕事無し、ご飯を炊かなかった日」として2018年11月29日を紹介します。ご飯のない日は市場で食事を摂ることになりますが、この日は週二回のテント市が開かれる日になっています。 

 

 


 

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7時、スナック菓子とフルーツで軽めに朝食をすまし、洗濯。
部屋のドアを出て数歩の好立地でポンプがある。バケツは24リットル。もちろん手洗いなのだがすっかり慣れて不便は感じない。

強い日射しの下、服を干す。日光が直射していれば2,3時間ほどで乾いてしまう。
右から日本に帰ったときに西成で拾った海人と書かれたTシャツ、村へ行く途中の道で拾ったミロのTシャツ、少し大きな隣の市の古着屋で5ペソで買ったトランクスが二つ、ゴミ収集に参加した時に拾ったシーツ、フィリピン人の友人から貰ったTシャツ。
自己資本比率が当社規定を大きく下回っている。 チクショウ、なんて日だ。

 

 


 

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市場へ行く前に近くの小学校へ寄った。一年前に校舎裏の園芸スペースに植えたパッションフルーツは上にも横にもよく伸びている。

今日は学校がお休みのかわりにガールスカウトのキャンピングがあるよう。校庭にいくつものテントが見える。横断幕にはテーマは環境保護児童虐待の防止とある…。奇跡のコラボ。まぁ、フィリピン人がそう言うのだからそうなのだろう。

緑のスカートと黄色のスカーフがユニフォーム。

 

 


 

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途中で知り合いの親日派のおじさんのトライセクルに拾ってもらって「側車」の方に乗り込む 。オイルタンクには小さなお孫さんを乗せているがこの国ではよく見かける光景である。また二人ともノーヘルだが細けぇことはいいんだよ、のお国柄なのである。このおじさん、日本の挨拶や唱歌を少し知っているようで乗車中よく披露してくれる。まぁそれはいいのだが山下金塊の噂を本気で信じているようで時々どこから仕入れたのか古い絵地図のコピーを持ってきて漢字を翻訳してほしいと依頼してくる。その都度、本当じゃないから信じないでと言い添えるのだが一向に意に介さないようである。困りものなのはこのおじさんだけでなく、一定の年齢より上の人達はそのほとんどがこの噂を信じているということである。 村長さんを含め、良識派と思われる人達もこの町のどこかに金塊が埋まっていると信じて疑わない。延べ10回は解読の相談を受けた。最近は「 もし見つけたら10パーセント下さいな」などと冗談を付け足してその夢に付きあってあげることにしている。 

トライセクルで混み合う市場の南西口。町ごとでトライセクルのテーマカラーは統一されており、我が町は青地に黄色、北隣りの市は赤と青と白、東隣りの町は黄緑と橙、南の町は赤地に黒となっている。今日は市場の外周に天幕を張っての週二回の産直テント市が催される日となっており、多くのトライセクルが出入りしている。この南西口に乗りつけても渋滞に嵌まることは目に見えているのだが、ほぼすべてのドライバーはお構いなしに突っ込んでくる。交通整理の人員でも配せばよさそうなものだが誰もそうは思わないらしい。年末など本当にごった返す時は一方通行になる。

 

 


 

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平常時は構内に店を構えるフルーツセクションの面々も、マーケットデイは外周で店を広げるのが恒例となっている。私の観察の限りでは、ミカンはパキスタンから、リンゴは中国から、梨は韓国から、と熱帯以外の果物は輸入物が多い。傷やネズミになった等外品は5ペソで投げ売りされている。馴染みの客になるとそうしたものをオマケしてくれることがあるので、返礼に私も売れ残ったドライカレーとかを無料であげることにしている。すると次回たくさんタダでくれるという好循環になってきている。実は私はこうした"提携店"をいくつか持っており、そのおかげで営業的にロスは発生しない…。ちなみに、等外品を買うのは日本以上に卑しいみっともないという観念が有るのかどうか、またそうした者の料理に金を出すものか、といったことが有るのかどうか、精肉・鮮魚のセクションではまぁまぁ売れるが、青果部では20人ほど店員さんが居るのに、これまで買ってくれたことは片手で数えられるほどである…。

瓶入りの蜂蜜350ml入りで100ペソ、700ml入りで200ペソ。隣りの市では値切ると大瓶を150ペソで売ってくれることを私は知っている。ディスプレーとしてかハニカムも陳列されている。食べ方はいろいろあると思うのだが、プレーンのクラッカーにかけて食べるとめちゃくちゃウマイ。最近はレモンの皮を剥いてから輪切りにしてそこにかけて食べたりしている。プチ贅沢である。
贅沢といえば、この国ではさまざまなおいしい果物があるのに金欠や親の教育方針(の無さ)によって多くの子どもたちがそのおいしい果物を味わったことがないということが往々にしてある。蜂蜜もそのひとつにあたり、漁村部では10代になっても一度も口にしたことのない子が大半で、蜂蜜を塗ったクラッカーは大人気だった。貧困と書かずに金欠と書いたのは、中流以下だとしても、まぁまぁの収入源は持っており、しかし酒やギャンブルやタバコやトライセクル代など、不要とも思える出費がみられ、子供の栄養や教育の面にまで回らないからである。困窮している層を貧困層と決めつけるのは外から見た一面的な見方でしかない。 

トマトの大きさは普通のトマトとプチトマトとの中間。品種は4つか5つかあり、甘いものもある。トマトは最も値段の上下が激しいスリリングな野菜。最安はキロ8ペソ、バギオで天候不順が続いた時には10倍まで上がる…。
保存性を高めたトマトソースを販売アイテムに入れて、高値の時にその水準で売り捌くというのを目論んでいる。瓶のフタにゴム樹脂のついてない物だと黒カビとなってしまうよう。瓶もテント市の日に、ゴミから拾って再生しただろう物が安く売られているが、正値でシール性のあるものを買おうか検討中。投資だ。

白い大きなのは冬瓜の近種か?  同じような色をした白っぽいキュウリがあるのだがこれはなぜがフルーツの括りに入るらしく果物店に他のフルーツと並べられている。一年目、初見の時にこれは何?甘いの?と英語で聞いて、甘いとのことで購入したのにただのキュウリだったという目に遭っている。フィリピンの人は適当に答えることが多い。イエスノーで答えられる問いはしない方が無難である。

 


 

 

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 山芋と唐辛子。そういえば山芋はまだ買ったことがない。お好み焼きにでも入れるとどうか。赤唐辛子はテント市が終わると熟して傷んだのが落ちているので拾って植えると普通に育つ。決して高い物でもないが少し節約できるし家の近くにあると買い忘れた時などに便利である。 

洗剤やナイフも売られている。平時の店より安いことが多い。普段から相場を覚えておくことが肝心である。

すだちの上位互換、カラマンシーは1/4キロで25ペソという表示。マニラでは10ペソや8ペソというのを見かけた。豊作で入荷しすぎたのだろうか、地方の方が必ずしも安いというわけではないようだ。あまりに安いと運んだり袋詰めする方がコストがかかるように思うが、生産調整という概念は存在しないのか…。

レタスキャベツホウレンソウなどの葉物と根菜類はバギオから毎日入荷する。山道で土砂崩れがおきた翌日にもテント市が開かれたことがあったが、いつもの四分の一ほどの出店数。その出店しているのが本当の地場物の店というわけだ。葉物は除くが種類はバギオ商と引けを取らない。

 


 

 

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どこの市にもだいたいある両替のチェーン店。我が町にも市場のすぐそばにある。
マニラのいちばん率の良い両替商より50-70ペソ悪いが、それでもショッピングモールのは100ペソほど悪いのだからまだマシなのである。コンマとなっているので1万円札を窓口に出すと4540ペソと引換えになることになる。 為替の変遷以前紹介した

画がぶれてしまっているが黒米の蒸したもの。外側はパラパラしているが、中はもっちりしている。おはぎくらいのサイズで10ペソだったかな?

生きた鶏も売られている。一羽200-300ペソか? 羽の筋でも切られているのか身動きできずにいつもウ〇コだらけになっている。鶏肉店ももちろん市場内にあり、毛を毟られたのが近隣の養鶏兼加工場から冷凍で届き、解けながら陳列されている。

鮮魚は漁師の奥さんが売り子になって市場外周に出店している。地べたにシートを敷いて売るのだが、そのシートの裏表が管理されているようには見えない…。気になる人には気になるだろう。時々そのシートからも はみ出したりしているし…。
漁は午前3時でも4時でも操業しているようで、村の砂浜やモータープールで寝たりするときはポンポンポンというエンジンの音が静寂の中に届く。朝獲れなので新鮮なことは新鮮だ。 

 


 

 

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 ココナッツの若い実はブコと呼ばれジュースとして飲まれている。より熟したのはニョッグと呼ばれ、脂肪分のある実が厚くなってくるのでココナッツミルクを採ることができる。市場など人通りの多いところには必ずこのブコジュースの屋台が出ている。ものの本に拠れば、天然のスポーツドリンクと紹介されているが、仕事を注意深く見ると、果汁とは別に 前もって用意されている砂糖水を容器に入れている。幹線沿いの土産ショップなどで売られているヤシの実をカットしてストローを挿したやつを飲めば明白なのだが、甘さが全然違う。本当のブコジュースはほんのり甘いだけだ。
最近はプラスチック容器が禁止となり、紙カップで提供されている。紙カップの方が高価なので、ジュースの容量が減ったようだ…。
砂糖が入れられていると知ってから私はほとんど飲まなくなった。カラマンシーの果汁を一個か二個分入れると、味が締まってかなりおいしい。

市場は幹線(高速道路?)に面している。テント市の日は車も人通りも多い。

 

 

 

(長くなったので前後編に分けます…)