フィリピンの片田舎に閉じ込められています【後編】

床の張り直しを終えた翌週、また青年たちに手伝ってもらって、建物の傾きを直してもらった。
私の方で基礎の周りの掃除、現在の柱の根本の掘り起こし、礎となる石の用意を済ませておいて、4人掛かりくらいなら持ち上がるかと算段して声をかけた。持ち上げてもらっている間に私が石を置き、砂で埋めて水をかけて固めて終了。きちんと水平の床になった。…と思うが隣の家が傾いているのでよくわからない。前回同様にジュースをおごってみんなで飲んだ。

 

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隣の家もひどく傾いている。傾きで低い軒がさらに低くなり、通るときは頭を下げないとぶつけてしまう。最近ようやく傾きの修繕を終え、壁も新しくなった。でも竹張りの壁なので炊事場とテーブルが透けて見える

 

写真は自分の居る2Fから撮ったもの。中央2人の少年は中学2年生と3年生くらいに相当(というのは学校にきちんと行っているかわからないため)。本格的な雨季を前にして屋根の修理の手伝いをしている。きっと日当が出るのだろう。ちなみに大人は1人だった。

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工事に関係のない子供も乗って遊んでいた。

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ロックダウンの大きな影響の一つとして飲食店の閉鎖がある。近い距離で多人数が飲食・会話をするのは、とされたわけだ。飲食業はなにもないローカルな町では主要な部類の産業になると思うのだが、それが封じられ、雇用が無くなった。
どうやらその受け皿として建築現場に人が流れているようで、人件費のダンピングがあったかどうかは私の知るところではないが、フィリピンでは(というか少なくとも私の町では)にわか建築ラッシュとなっている。
私が時々利用していた市場2Fの食堂のおじさんもブロック作りの作業場での仕事にジョブチェンジしており、辺鄙な山の方の道だったのだが偶然通りかかって、手を振って挨拶し合った。家族もいるはずで、家庭を持っている人は大変だなぁ、と独り身の私は思ったものだ。
ところでこのコンクリブロックなのだが、モノによっては子供がチョップするだけで割れてしまうものも存在する。そっと持ち上げたり置いたりしないと割れてしまうのだ。私が出会ったブロックだけがたまたまそうしたものだったと祈りたい。
フィリピンでは4、5階建てくらいなら鉄筋コンクリートの柱を作り、その間にブロックを延々と積み上げているという工法をとっている。マニラで20階以上の建物を同じやり方で建てているのをびっくりして写真に撮ったのだかどこかへいってしまった。
日本を離れている期間が長くなってきて、私はもうどのような工法だったら正しいのか思い出せなくなっている。

 

私もその建築ラッシュに乗っかってというわけでもないが、貸家の入口のドアのうえに空いた空間があるのを見つけ、ロフトっぽい2Fにさらにロフトを作ることを思いついた。面積としては大きくないベッドくらいか。以前に廃墟みたいなところに住んでみたかったと書いたが、すぐにこれは難しいということに気がついた。子どもたちが階下でウンチやオシッコをするためだ。雨で流れないところなので当然臭気が籠もり、とても寝るような所ではない。もちろん口頭注意や貼り紙をしても効果がないことは目に見えている。伝えてウンと言ったところで翌日には忘れているか無かったことかになってしまうし、フィリピンでは至る所で”ここでは立ち小便禁止”という文言が大書きされているが これは”公衆便所はここですよ”くらいの意味しか持ち合わせていない。

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2Fから見下ろしたところ。これでもまだキレイな方で、いつもはこの3倍くらいの量のゴミが落ちている

寝るのは今までどおり浜として、ここの物件は、調理道具の収容に特化させることにした。つまり新ロフトをドア付きのロッカールームにしようというわけだ。なにせ鍵のついた所に物を置いておかないとどんどん無くなってゆくのだ。純粋に悪さをしようという子の他に、ゴミだろうと勘違いして何も考えずに持っていく子(私の持ち物が古い物や見窄(すぼ)らしい物が多いという事情もあるが)、私の気を引こうとして困らせようとする構ってちゃんの子などそのタイプは多岐にわたる。調理器具のメインの大フライパンと釜が無くならなかったのが奇跡的と思えるほどだ。

2Fのメインの方は子どもたちがときどき遊びに入って来ているようなのでドアを設けずに半ば公共のままにしておくことに。

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ロフトの床部分が完成

料理と販売もあるので それが終えたあとの時間を使い、2週間ほどかけてようやく完成。斜めにも材木を配して思ったより頑丈に仕上がった。隣の家のおじさんが通りかかり、「クオリティ!」とのこと(笑)。
竹は現地調達を試みたが、漁村なので成長させて竹のボートを作るのに使うらしく近所の人から断られてしまったため、私の現住の住居のオーナー所有の敷地から切り出して、15分ほどかけて毎回村へ担いで運んだ。右手の支柱2本は、隣の村から20分ちょっとかけて担いできた。ウータンのある友人の支払いが滞っていたので借金のカタに、と頂戴してきた。

 

 

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ぶら下げてあげて、ゴキゲンの少女。3年生くらいかと思ったら小さいけど5年生、と母親の談。もう6年生になるのだが学校の始まりがロックダウンで延期されている