フィリピンの片田舎に閉じ込められています【前編】

3月中旬のこと。週に2回ほど行っている市場東の小学校へドライカレーを売りに行くと門前にたくさん居るはずの子どもたちの姿がない。学校向かいのサリサリストア(コンビニの機能をしている小さな商店)で訊いてみるとコロナウィルスのためしばらく休校とのこと。ネットのニュースでコロナウィルスが武漢市を中心に広がっているのは知っていたので、まぁしばらくは仕方がないかと小学校をあとにし、昼時の市場内外と夕方の漁村でなんとか売りさばいた。
2、3日前まではその小学校で、「コロナウィルス」を中国語で書いてとせがまれて、十数人の腕にテキトーに“武漢新型肺炎菌”なんて書いてお金を取って荒稼ぎしていたのだが、この後 数日で事態が急変していくとはこのときは微塵も思っていなかった。

 

次の日。市場2Fの毎日のように利用しているネット店へ入るといつも子供たちで満員の店内が、立ち見の子が二人居るだけ。まぁそれはそうだ、流行り病で休校になったのだから、自宅待機にしているのが順当であり、こんな盛り場みたいな所に出入りしていたのでは本末転倒だ。しばらくネットをしていると、マスクをした二人のポリスが入ってきて、子供に出ていくように促し、店主にもなにか注意していたか。

その次の日も、ポリスが巡回に。子供は居らず、以前のネットのサバゲーをしてギャーギャー騒いでいるのから比べるとずっと快適にネットができるぞなんて思っていた。

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写真はその数日前の市場内・精肉セクションの様子。全て閉店で客は居ないが、これはコロナウィルスとは関係なく、豚が熱を出して3日間の出荷停止とのこと

そして、その翌日。買い物バックを手にいつものように市場へ向かったところ、その外周全てにビニル紐で作られた急拵えの規制線が…。
さらに、迷彩服を着た軍人さんが長い棒を持ってあちこちに仁王立ちをしている。これは只事ではない。規制線を辿ると市場東側に入口が設けられている。市役所あたりからの派遣か、婦人の係員に訊くとやはりコロナウィルスのためとのこと。…マジかよ。
市場へ入るためには 村役場から発行の通行証みたいのが要るよう。外国人である私にはそうした情報みたいのは一切入ってこない。現地の人にしても掲示板や回覧板の類いがあるわけでもなく、口伝えなのだろうか?
とりあえず市場近隣の食料品店などで買い物を済ます。ここ数日、マスクをしている人が増えたなぁ、なんて思っていたが 今日マスクをしていないのは私だけ…。軍人さんに職質をかけられる日も近いか、となる。

そしてその次の日だか、ID(SRRV)を提示してPassSlipという通行証を村役場で発行してもらい市場へ行って買い物。マスクの着用も義務化らしい。しかしネット店の方は当局による規制か、それとも子供がごっそり減ったことで稼働率の低下があったか、閉店。
ネットをしないわけにはいかず(?)、市場からさらに20分くらい歩いた所に、友人の宅があり、ネットを無料でさせてもらおうと算段。時々お好み焼きなんかを作ってあげてるのでそのくらいは問題ない。ギブアンドテイクである。
炎天のもと国道沿いに歩く。長距離バスがお休みになったのは数日前に知っていたが、短距離を結ぶジープも全く見当たらなくなり、国道は閑散としている…。大汗をかいて宅前の門まで着いて呼び出すが、家に居ないとダメだよ! と逆に怒られてしまう始末…。 ポリスにキャッチされるという。 これはかなり本気の規制のようだ。
しかし友人のネットを使えないとなると、自宅近所のコイン式ネット店も一時閉鎖の掲示がなされており、これでは情報遮断である…。
ぐったりして国道を市場まで戻るとその付近で マウンテンバイクの男性二人組がポリスに止められて職質のうえ、BJMP(町単位の拘置所)と書かれた車両に自転車ごと乗せられているところ…。買い物客と近隣住民がその様子を遠巻きに眺めている。二人の男性はマスクをしているため、通行証無しで他市との行き来をしたといったあたりか。うわぁ、本当なんだ、と目を伏せて足早に現場を離れる…。

 

(中編に続く)