回想ニホン料理。(最近の料理特集 №2)

今週のお題「うるう年」

 

 

日本からフィリピンに来て、この2月でもう四年。
四年前の2月も閏月だったのですね。

日本は令和の時代に入ったということですが、私はまだ一度も「令和」という文字を手書きしたことがなく、その実感が持てていません。
まぁ、そうした時代に関した実感のなさもフィリピンに来た当初のものと似ていて、ジープやトライセクルから撒き散らされるディーゼルの排煙、あちこちでの立ち小便、密集する番地も付されていないバラック小屋などを目の当たりにして、戦後からいったい何年経っていると思っているんだ…! と のけ反ったものです。

私の出入りしている漁村では、幼年の子が家の前の砂の上で(だいたいは下痢ぎみの)ウンチをして 少しだけ年上のきょうだいが 大きなスコップを抱えて砂に埋めたりする場面に出くわしたりするのだけれど、今となっては私はもうそれをおかしな光景だと思わなくなってしまいました。
あぁ、この人達は一生こうした生活を送るんだ、という諦観と、同時にその「生活」なかに含まれる幸福を思い、また、私も(日本を外れて)そうした中に生きていくんだ、という自嘲と いくぶんダウンサイズされては いるかもしれないけれど その幸福とやらにあやかる、といったとこでしょうか。


今回も思い出したりネットで見かけたりして食べたくなったものを紹介していきます。

 

 


 

 

 【 中華ちまき / 】

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一年目だか二年目だか、首都圏の旧マニラ市街にチャイナタウンがあるというのを フィリピンプライマー誌で目にして足を延ばした。そこで食べたのが肉まんと中華ちまき、どちらも日本のものと遜色ない味で、さすがにこれって自分で作ることできないよなぁ、と検索してみると、なんとかできそうな雰囲気。包みは笹の葉からバナナ葉に現地アレンジ。竹の皮は蒸すと独特の香りが出るのだけど、バナナの葉でもやっぱり何だかいい匂いが出てくる。筍は手に入らないので(季節によっては地元にも出回る、しかしアク抜きが面倒くさそう)、食感のよく似た写真の黄色の具に変更。何かわかるかな?

三角形のは25ペソ、細長いのは10ペソ。子供はなかなか買いづらいので半分に切って5ペソで売ってあげる。

市場での行商では青果売り場の電子秤でキロ単価を「150」と入力し、そうして店員に「ね?25ペソだろ?」 なーんてやって売り込んでいく。しかし私は青果部では傷んだ安売りのバナナか 萎びたセロリやネギしか買わないので(他の多くの野菜は木曜と日曜のテント市の日にまとめ買いする)、貧乏くさいやつの作ったものなど買うものか、ほとんどにおいて見向きもされない。そこら辺のものでも食べてればいいよ、と私もさっさと切り上げる。しばらくあとで、空になった釜を見せびらかしながら凱旋する算段である(捻れた性格だ)。

 

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いま仕事用のノートを見返して数えてみると13の具材と10の調味料が使われている。販売はするのだがもちろん自分でも食べる。食べて毎回、半径数十キロでこれより美味しい料理ってないんだなぁ…、とおいしさとガッカリ感が綯い交ぜになった不思議な気持ちになる。ずいぶん遠くに来ちゃったなぁ…。

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餅米1.2kgくらいが釜に収まるmaxかな?
餅米は普通のお米の2倍の60ペソ。利益率はいいんだけど、これ作るの5時間近くかかるんだよね…。その間立ちっぱなし。売るだけの体力はほとんど残っていない…。誰か代わりに売ってくれないかなーなんて思う。
今までに十数回作っているはず。

 

2019年、マニラへビザ更新に行ったときに、以前のチャイナタウンの店で食べた中華ちまきを、さぁ私の作ったのとどちらがうまいか、と再び食べに行くことに。
しかし食べたのは、醤油の味しかしなくて、ゴマ油も、五香粉も、オイスターソースも入っていないように思われた。焼きおにぎりを餅米で作っただけのようなもので、真ん中に豚角煮が入ってなんとか体裁を保っているに過ぎない。以前の感動は何だったのか? それともレシピが変わったのかな?
握りこぶしくらいの大きさはあったが、売価は60ペソ、計量して換算すると私のものの方が安かった。うまくて安い。余裕で私の勝利。


ちなみに同店の看板メニューは中華ちまきではなくて、肉まんの方である。これは一個22ペソでホカホカ、韮だか香味野菜と筍?も入っててこちらは文句なしにうまい。私も肉まん作りに挑戦してみたことがあったが、具はともかく蒸しても生地がうまく膨らまず。実は二次発酵の必要性を軽くみて省いてた…(ドライイーストを使いだして間もなくだったので)。かなり時間が空いているが、いつの日かリトライしたい。お手製の竹を細く切ったものを釜の中で組んで、きちんと3段くらいにして蒸すので、手間がかかり、収益性については良くないと思う。当面のあいだ 商用は難しそう。

 

 


 

 

ウスターソース/ 】

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お好み焼きを作ろうと思ったときに欠かせないのが、お好み焼きソースである。日本ではどこのスーパーの棚にもあるのだろうが、フィリピンでは日本食料品店と一部のお高めのスーパーにしか置いていない。法外な値段で、とは言いたくないのだが日本の小売価格にさらに50%くらいかそれ以上のせてある。そんな物に手を出していたのでは安いものができあがらないので、自分で作れないものかとネットで検索。こちらの手作りウスターソースの作り方 | お野菜たっぷり らでぃっしゅレシピを参考に作ってみたところまぁまぁ納得のできるものが仕上がった。原料は少しずつ増え、10の野菜、7の果物、21のハーブ&スパイスが現行のレシピである。2時間半ほどかけ一ヶ月で1、2回作ってる。現在主力のドライカレーにはこの自作ウスターソースが投入されるわけだが、消費が激しく、1リットル作っていたところを2リットルに、直近は3リットルを一度に作った。

 

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まぁ熟成はしていないので、言ってみれば、具材を塩と砂糖と酢で軽く煮たなんちゃってウスターソースである。以前はシール性のある蓋の瓶に入れていたが、常温でも傷まないようなので非気密の数百mlの大瓶に入れることにした。
このソース、誰か高く買ってくれねーかなー、なんて夢想している。
一応60〜70ペソ(250ml)を想定している。 まだ紹介が追いついていないが、カレーの方は「ビンカレー」として同じような価格・容量で既に販路を開いている。

 

カレーライスにウスターソースをかけると もう少しおいしくなるよ、というのは、私が父から習った数少ないことの一つである。また、土日なんかに、母が作ってくれたドライカレーには確かハウス食品のレシピに従ったのだろうが、レーズンとバナナ、ときどきはパイナップルが入っており、これらの果物は、今の私のドライカレーを支えている。

 

 


 

 

【 ちらし寿司/ 】

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行商をしていると日本や日本食に興味のある人が結構多いことがわかった。

隣市の巨大ショッピングモール内のスーパーでも「カリフォルニア・マキ」というのが置いてあり ハナシの種に、と買ってみるとそこでの巻き寿司にはなんと酢が入っていない…(!)。 もちろん お味の方は寿司とは程遠い。なぜか原料欄に「バラン」…。確かにパック内には使われているけど…。 ちなみに日本のスーパーではパック寿司は黒色や金色なんかでプリントされたゴージャス感のあるパックを使われているがこちらでは日本食材店にての取り扱いがほんの少しあるだけ。商社の人、ビジネスチャンスですよ〜。

同モール内に日本食レストランのチェーン店があったりする(「tokyotokyo」の検索結果)。
寿司はもちろんシーフードの具が乗ったり巻かれていたりするものだが(こんなことを念押しすることなど日本では無いだろう)、こちらでは主役を張っているのはカニカマで、他に一番シーフード寄りなのは橙色のプチプチ。これも何の魚の卵かわからず、コピー食品である公算がすこぶる高い。お金をドブに捨てるようなものなのでまだ買っていない。


さて、そのモールにて板海苔が売られていたので値は張るが買ってみることに。10枚入りで127ペソ。ハングルにひらがなが添えられているがもちろん韓国の製品。
少量で巻き寿司を試作して村や市場で売ってみたところ、話には聞いていたがこれが、ということなのかまぁまぁの売れ行き。
しかし板海苔の消耗が激しく、多くの利益を得るのは難しいよう。サーブ量も少なくなっちゃうし。

そこで、今回のちらし寿司となった。ちょっと贅沢品の?シーチキンも入れてある(後にこれも自作可能ということが判明、ネットは何でもあるな)。日本料理・中華料理に欠かせない干し椎茸は、前日に人参と甘くどく煮込んだ。干しエビもあるような無いような。絹さやは色よく塩茹で、卵はフィリピン人向けに砂糖を多めに入れた。

フィリピンは長粒種が主流なのだが、ジャポニカ米は餅米と同様に その倍する。そうした事もあって高めの値付け。いつもドライカレーやチャーハンを1サーブ25ペソのところを、今回のちらし寿司は35ペソとして売った。
いつも買ってくれる精肉店や美容院などはだいたい買ってくれた。日頃のメニューがしっかりしていると、新メニューを投入しても この日本人の作るものだから大きくハズレを引くこともないだろう、となる(といいな)。

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部屋に2つあるベッドの片方をお片付けしてそこにマニラペーパーを敷いて、12枚の紙皿を並べた。酢飯のあとに具を載せていくが、冷めても問題ないので、いつものようにせかせか作業しなくてもよく、早めに始めてダラダラやればいいので、その分 気持ち的にはラクだった。
販売は昼のみで9食、自家消費で昼に1食。2皿余ってしまったが、それだけを夕方に村へ売りに行くのは面倒だったので、夕食に食べることに。フィリピンの人はおやつをよく食べるので三食の量は控えめである。なので私の料理の盛りも控えめ、夕食で普通に2皿たいらげた。

 

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2019年にマニラへ行った際にチャイナタウンで別メーカーの海苔を100ペソで売っているのを見つけた。その後さらに韓国食材店でその海苔が85ペソで売られているのを見つけ買い入れた。

いま写真を見ていると、また作ってみたくなってきた。雨季は6月にやってくるというので、開封するならそれまでに使い切らなければならない。ーーというのはあるんだけど、昨年は梅雨時でも開封の海苔にカビが生えたりということはなかった。ガスで炙れば湿気も飛んで香りも出るし。

また、あまり単一のメニューだと飽きが来るので板海苔を使った他のメニューを開発したいな。

ここでの「飽きが来る」というのはお客さんが、というのもあるかもしれないけど、「私」が「作ったり食べたりするのが」飽きが来る、という意味合い。

 

私が食べたいものを作って、私が食べたいものを売る――。

日本では消費者目線でのビジネスを、なんて言われて久しいけれど、売る側目線での商品開発がまだまだ通用する修羅の国、フィリピン。